2024.03.28
間取りの自由度が高く、フラットな動線が人気の平屋。「家事や子育てがしやすい」と、注文住宅で平屋を希望するご夫婦が増えてきています。
なかでも、庭を囲うようにしたコの字型の平屋は、開放感がありながら、プライバシーも確保できるため、注目されています。
コの字型の家は、外からの視線を気にせず中庭を楽しめるのが魅力。外と内が一体化されたおしゃれなデザインも可能です。
そこで今回は、コの字型の平屋の暮らしを検討されている方に、メリット・デメリットを解説します。
デメリットの対策として、おさえておきたいポイントもご紹介しますので、ぜひ家づくりの参考にしてくださいね。
目次
家族4人で住む場合、一般的な家の広さは「30~40坪」です。
しかし、敷地いっぱいに家を建てることはできません。
ではどれくらいの土地があれば、30~40坪の平屋が建てられるのでしょうか。
建物の面積の上限は、一定の区域ごとに規定されている「建ぺい率」「容積率」によって決められています。
建ぺい率 | 敷地面積に対する建築面積の割合 | 建ぺい率=建築面積÷敷地面積×100 |
容積率 | 敷地面積に対する建築物の延床面積の割合 | 容積率=延床面積÷敷地面積×100 |
建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合のことで、敷地内に一定の空地を確保するために規定されています。
これは火災時の延焼防止や避難経路を確保するためです。
建築面積とは、建物の外壁・外壁内の柱の中心線で囲まれた面積のことで、建物を真上から見たときに見える範囲のことをいいます。
容積率は、敷地面積に対する建築物の延床面積の割合のことで、日照の確保などから建物の大きさ制限するために規定されています。
「延床面積」とは家全体の床面積のことです。
容積率は、建物の階数が多くなるほど高くなります。
つまり平屋の場合、容積率は気にしなくても良いといえますが、建ぺい率は建物の大きさを決める際に必要ですので、必ずチェックしておきましょう。
家の大きさが30坪の平屋を建てる場合、建ぺい率ごとの必要な敷地面積は、以下のとおりです。
建ぺい率 | 必要な土地の広さ |
30% | 約100坪 |
40% | 約75坪 |
50% | 約60坪 |
60% | 約50坪 |
70% | 約43坪 |
80% | 約37坪 |
建ぺい率に応じて30坪の平屋を建てる場合、約37坪~約100坪の土地が必要です。
建ぺい率によって必要な土地の大きさにかなり差がありますので、土地を購入する際には希望の広さの家が建てられるか、しっかりと確認しておきましょう。
ちなみにコの字型で中庭を設ける場合、屋根がかかっていると「建築面積」に含まれる場合があるので注意しましょう。
最近の建築費用相場は、坪単価60万~です。
30~40坪の平屋なら、2,000万~2,500万円前後が相場です。
また家本体以外にも、以下のような費用が必要です。
諸経費 | 不動産会社・融資の手数料、登記費用、火災保険料など |
外構費 | 駐車場やアプローチなど工事費 |
その他 | 電気・水道の引き込み工事、照明やカーテン、家具家電などの購入費 |
これらの費用は、500~1,000万円程かかります。
また購入した土地の状況によっては、地盤改良や残土処理、造成費、既存建物の解体費用などが必要な場合も。
家づくりの打ち合わせでは、かかる費用をしっかりと把握したうえで予算を組み、無理のないプランですすめていきましょう。
コの字型の平屋は中庭も建物の一部となっているため、プライベート感を確保しつつ、リゾートライクな開放感を感じられるのが魅力ではないでしょうか。
その魅力について、一つずつ見ていきましょう。
コの字型の平屋は中庭が三方の壁に囲まれているので、外からの視線を気にせずに、プライベート空間として活用できます。
家族や友人とのBBQや、プール、ドッグランなど、人目を気にせずにアウトドアを楽しめます。
小さな子どもがいるご家庭は、公園に出かけるだけでも荷物や移動の準備で大変ですが、中庭があれば気軽に外遊びもできます。
予期せぬケガや着替えが必要な時も、家にいればすぐに対応できるので、安心です。
また中庭はガーデニングや、家庭菜園などの趣味スペースとしても最適です。
色鮮やかな花々や野菜たちを室内からも鑑賞でき、自然の変化を楽しめます。
家族との憩いの場や、趣味の場としても活用できる中庭は、きっと家での暮らしに広がりをもたらせることでしょう。
平屋は2階建てのように日の当たるバルコニーがないため、室内に洗濯物を干すスペースが必要に。
コの字型の平屋ならたっぷり光が入るので、室内干しでも洗濯物が乾きやすくなります。
また中庭に外干しできるのもメリット。
壁に囲まれているので、人目を気にせず洗濯物をたくさん干せます。
シーツなど大きなものも、おひさまの下で干せると気持ちがいいですね。
平屋は建物が大きくなると中央部分の採光がとりにくい、というデメリットがあります。
しかし、コの字型の平屋は建物の中心に中庭を配置するので、外の光を効率よく取り入れられ、家全体が明るくなります。
また窓数も増えるので風の通り道を確保でき、建物全体の風通しが良くなります。
平屋は居住スペースがワンフロアになっているため、ほかの家族の生活音など気になる場合があります。
コの字型の平屋は、中庭をはさんで、パブリックスペースとプライベートスペースを分けることが可能です。
生活の距離が近いとお互いにストレスを感じやすくなりますが、中庭を隔ててフロアを分ければ、家族間のプライバシーが確保でき、居心地の良い住まいが実現できます。
外と内が一体化するコの字型の平屋は、自然と調和し、明るく風通しの良い家になります。
室内と中庭をフラットにつながるようにすれば、建物に奥行きが生まれ、さらに開放的で広々とした空間に。
またシンプルな形状は単調にもなりがちですが、コの字型は建物の形状に変化ができ、デザイン性の高い外観をつくりやすくなります。
コの字型の平屋はデザイン性が高く、内外でのプライベートを確保できますが、デメリットもあります。
では、どういったデメリットがあるのでしょうか。くわしく見ていきましょう。
平屋は居住スペースがワンフロアなので、部屋から部屋への移動が長くなります。
とくにコの字型は中庭に沿って間取りを配置するので、動線が長くなりがちに。
動線が長くなると家事効率も下がりますし、物がリビングなどのパブリックスペースに集中しやすくなることも。
間取りを考える際は、生活スタイルや日々の習慣を思い出し、しっかりとシミュレーションしておくことが大切です。
コの字型の平屋は外と内とのつながりを持つことができますが、同時にプライバシーへの配慮も必要です。
中庭の広さや位置によっては、家の中が見えてしまう可能性があります。
またすべての居室が外に面しているため、空き巣に狙われやすいというデメリットも。
空き巣の侵入手口は、窓に細工をして開錠し侵入するケースがもっとも多いため、防犯対策はしっかりしておくことが大切です。
コの字型の平屋は、建物の構造が複雑になるので、建築費用がかかる場合があります。
平屋は延床面積が広いため、2階建てよりも基礎や屋根面積も広くなり、建築費用が高くなる傾向にあります。
コの字型はさらに構造が複雑なため、建築資材もその分増え、費用が高くなります。
また構造が複雑になると、耐震性を高めるための耐震工事が必要になることも。
その他にも、中庭に設置するウッドデッキやタイルデッキなどの外構費、また雨水の排水工事費も必要です。
費用の面でも少し触れましたが、中庭の環境をよくするためには排水工事はかかせません。
コの字型の場合、中庭が三方を壁に囲まれているため、雨水がたまりやすくなります。
中庭の排水がしっかりできないと湿気がこもりがちになり、虫やコケが発生しやすくなることも。
近年では集中豪雨が頻発しているので、雨水の逃げ場がないと床上浸水する恐れもあります。
またコの字型は、植栽や雑草などの手入れなど、中庭のメンテナンスにも手間がかかります。
外構をプランニングする際には、植栽や雑草などの手入れがしやすいよう、考慮しておくことが大切です。
デメリットをふまえた上で事前に対策しておけば、快適で暮らしやすい家づくりが可能です。
コの字型の平屋でおさえておきたいポイントを4つ、ご紹介していきますので、しっかりおさえておきましょう。
コの字型の平屋は平行移動が長くなるため、優先したい動線を決めてから間取りを配置しましょう。
たとえば家事動線を優先する場合、リビングと水回りを近くに配置したほうが、家事の時間は短縮できます。
家族とのコミュニケーションを重視するなら、リビングを中心に各部屋を配置すると、家族が自然と集まりやすくなります。
また中庭も間取りの一部として行き来できるようにしておくと、便利かもしれません。
中庭のある平屋(豊橋市)
構造:在来工法 面積:76.32㎡(23.09坪) 間取り:2LDK 家族構成:2人家族
こちらは中庭から洗面室、リビングへと行き来できる間取りになっています。
洗面室から洗濯物を持ってきて、中庭に干し、リビングに移動する、という一連の動作がコンパクトにすみますね。
その他にも住まいの中で生じる動線は、「来客を意識した動線」や、「通勤・通学時の動線」など、さまざまなパターンが考えられます。
優先したい動線をしっかりと決めた上で、中庭を中心にどの部屋をもってくると良いかを決めておきましょう。
中庭の広さや位置によっては、家の中が見えてしまう可能性があるため、外からの視線を遮る工夫が必要です。
外構部分には目隠しになるよう、フェンスや植栽を取り入れるとよいでしょう。
室内には光を反射して中の様子を見えにくくする、ミラーレースカーテンがおすすめです。
通常のレースカーテンのように採光は取れるので、リビングなどの大きな掃き出し窓などに取り付けるとよいでしょう。
また窓のサイズや種類によっても、防犯性を高めることができます。
たとえば細長い横すべり窓や、縦すべり窓は、外からの侵入を防止できます。
採光・通風も取れるだけでなく、外観のアクセントにもなるため、おすすめです。
平屋はワンフロアのため、ある程度の土地の広さが必要です。
土地には区域で定められた建ぺい率により、建てられる建物の面積に上限があります。
希望している家の広さを建てるには、どれくらいの敷地が必要かを検討した上で、予算を組むようにしましょう。
またコの字型の平屋は構造が複雑なため、予想していたよりも費用がかさむことも。
家づくりの打ち合わせでは、初期段階で総予算をしっかり伝え、購入した土地やプランによって、かかる費用はどれくらいか確認しておきましょう。
中庭を設けるなら、景観維持やメンテナンスなどの管理がしやすいようにしておきましょう。
水はけを良くする工夫
景観を維持する工夫
中庭は吹きだまりとなり、落ち葉が舞いやすいので、葉が落ちにくい、シマトネリコやオリーブなどがおすすめです。
またウッドデッキはタイルデッキよりも滑りにくく、木の温かみのある質感から人気がありますが、デッキ下は水はけが悪くなるので、虫が湧いたり、ウッドデッキの腐食につながることも。
ウッドデッキを採用するなら、下は傾斜をつけたコンクリートにして、水はたまらないようにしておくと良いでしょう。
今回はコの字型の平屋のメリット・デメリットについて解説しました。
コの字型の平屋は中庭も建物の一部となっているため、プライバシーはしっかりと確保つつも、自然と調和した開放的な住まいを実現できます。
家族との憩いの場や、趣味の場としても活用できる中庭は、さらに生活に彩りを与えてくれそうですね。
コの字型の平屋は動線が長くなりがちになるので、優先したい動線を中心に間取りを配置するようにしましょう。
また家づくりを進める際には、中庭を設けることでかかる費用や、メンテナンスの手間についても事前に把握しておくようにしましょう。
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