COLUMN コラム
頭金は本来、家を買うときにまとまった自己資金として用意するものですが、最近ではゼロでも住宅ローンを利用する人が増えています。
しかし、「本当に大丈夫?のちのち後悔しない?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、頭金なしで住宅ローンを組むメリットとデメリット、気をつけたいリスクや後悔しないためのポイントをわかりやすく解説します。
フルローンでのマイホームを考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
頭金なしでも住宅ローンは組めるの?

金融機関によっては「フルローン」に対応しており、一定の条件を満たせば可能です。ここでは、頭金の役割や、実際に頭金なしで家を建てた人が占める割合について解説します。
頭金とは?
頭金とは、住宅を購入する際に金融機関からの借入とは別に、自己資金から支払う費用のことです。
物件価格の1〜2割が目安とされています。
また、頭金を入れることでローン審査が通りやすくなったり、金利が優遇されるケースも。ただ昨今では、住宅価格の上昇や若年層の収入事情を背景に、あえて頭金を入れずにフルローンを活用する人も増えています。
頭金なしで家を建てる人はどれくらい?
近年、頭金なしで住宅を購入するケースが増加しています。
国土交通省の「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によれば、30代の住宅取得者のうち、頭金ゼロで購入した割合は37.0%、1割程度が24.4%となっており、約6割が頭金2割未満で住宅を購入しています。
また、住宅金融支援機構の「2023年度 フラット35利用者調査」では、注文住宅を建てた方のうち、頭金なしでフルローンを組んだ割合は11.17%、土地付き注文住宅では17.01%と報告されています。
これらのデータから、頭金なしで住宅を購入するのは一般的な選択肢となりつつあると言えるでしょう。
(参考:国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査報告書(外部PDF)」・住宅金融支援機構「2023年度フラット35利用者調査」)
頭金なしで住宅ローンを組んでも本当に大丈夫?
たしかに、頭金なしのフルローンは初期費用を抑えられる反面、借入額が多くなるため、月々の返済負担や総返済額は増加します。
また、金融機関によっては金利が高くなる可能性や、審査がより厳しくなるケースも。
とはいえ、無理のない返済計画を立てれば、頭金なしでも十分にローン返済は可能です。
重要なのは、自身の収支バランスやライフプランと照らし合わせて判断すること。
頭金なしでも頭金を用意する場合でも、情報収集と綿密な返済計画は必ず行いましょう。
頭金なしで住宅ローンを組むメリットとは?

頭金なしは悪いことのように感じられますが、実は意外とメリットがあります。ここでは、頭金を入れない場合に発生するメリットをご紹介します。
お金を手元に残せる
頭金を支払わずに住宅ローンを組む最大のメリットは、まとまった資金を手元に残せることです。
一般的に、住宅価格の1〜2割にあたる頭金を準備するとなると、数百万円単位の資金が必要になります。
数百万単位を使わずに済むとなると、引っ越し費用や家具・家電の購入、外構工事、場合によっては予備費としての貯蓄など、他の支出に充てることが可能です。
また、急な出費への備えも確保しておけます。
頭金なしは、資産を減らさずに住宅を手に入れられる柔軟な選択肢と言えるでしょう。
すぐに住宅購入へ動ける
頭金を貯めるまでに何年もかかってしまう…というケースは少なくありません。
資金を貯める間に住宅価格が上がったり、金利が上昇したりと、先送りにすることで不利になる場合もあります。
特に、家族構成の変化や転勤、子どもの進学など、ライフスタイルに応じてすぐに住まいが必要になる人は多いでしょう。
早く購入すればその分、住宅ローン控除の適用期間や完済時期も前倒しにできるため、長期的な資金計画にもメリットは大きいです。
住宅ローン控除の効果をより受けられる
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンの年末残高に応じて所得税や住民税が還付される制度です。
つまり、ローン残高が多ければ多いほど、控除される金額も大きくなります。
たとえば、控除率が0.7%、上限が4,000万円のケースでは、10年間で最大280万円の控除が受けられることに。
ただし、所得税額や住宅の性能、借入内容によっても控除額は変動するので一例として覚えておいてください。
頭金なしで住宅ローンを組むデメリットとは?

頭金なしの住宅ローンはメリットも多いですが、やはりデメリットもあります。ここでは、頭金なしのデメリットをご紹介します。
総返済額と月々の返済額が多くなる
頭金を入れずにフルローンで住宅を購入すると、借入額がその分大きくなります。
借入額に対し利子も付いていくため、当然ながら総返済額も増加。金利が同じであっても、借入額が3,000万円か3,500万円かで、10年・20年後の支払総額に大きな差が出てきます。
また、ローンの元金が多いと、毎月の返済額も高くなることに。
貯蓄やレジャーに回せる余裕が少なくなる可能性もあるでしょう。
ローンの審査が厳しくなる
物件価格だけでなく諸費用まで借りる“フルローン”や“オーバーローン”になると、審査が厳しくなる傾向にあるためハードルは一気に高くなります。
審査では年収や勤め先、雇用の安定性、他の借入金などが主にチェックされますが、審査に通っても、希望していた低金利が適用されなかったり、融資額が減らされたりすることも。
資金が足りずに希望の住宅が手に入らない可能性もあるので注意が必要です。
担保割れする可能性がある
頭金を入れないということは、住宅ローンの借入額が物件価格の100%になるということ。
将来的に住宅の価値が下がった場合、売却してもローン残債が完済できない「担保割れ」が発生するリスクがあります。
たとえば、購入時は3,500万円だった住宅が、数年後には市場価格が3,000万円へと下落するとしたら、売却しても借金が残る状況に。
住宅を売却する場合、原則として残債は一括で返済しなければならないので、売るに売れない可能性があるでしょう。
借入金利が高くなる可能性がある
金融機関によっては借入が住宅価格の9割を超えるなど、貸す側にとってリスクの高い融資には金利を高めに設定されるケースがあります。
数字としては小さく見える0.1%〜0.3%の金利差でも、長期的に見れば総返済額に数十万円〜百万円単位の影響を及ぼすことを覚えておいてください。
「頭金あり」と「繰り上げ返済」はどっちがお得?

住宅購入時に300万円を「頭金として先に払う」か、「繰り上げ返済に回す」かで、返済総額や利息にどれほど差が出るのか気になる方は多いでしょう。
住宅価格3,000万円・固定金利1.5%・返済期間35年という条件で、以下に比較シミュレーションしてみました。
条件 | 頭金あり(300万円) | 頭金なし+10年後に繰り上げ返済300万円 | 頭金も繰り上げ返済もなし |
借入額 | 2,700万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
総返済額(概算) | 約3,882万円 | 約4,267万円 | 約4,382万円 |
支払利息総額(概算) | 約1,182万円 | 約1,267万円 | 約1,382万円 |
繰り上げ返済による期間短縮 | なし | 約5年短縮 | なし |
最終完済時期 | 35年後 | 約30年後 | 35年後 |
このように、繰り上げ返済によって返済期間を短縮できるメリットはありますが、最初から頭金を入れたほうが支払利息は少なく、総支払額も抑えられます。
頭金を出せば、ローンのリスクも下がり、審査や金利条件で有利になることも多いです。
一方、頭金をあえて貯金として残し、資金に余裕ができた段階で繰り上げ返済するのも、手元にお金を残しておきたい人にはメリットは大きいです。
金銭面だけを見ると頭金ありの方がお得ですが、家計の安定性やライフプラン、今後の収入の見通しなどを踏まえて、自分に合った返済計画を選びましょう。
フルローンで後悔しないためのポイントとは?

大きな買い物でローンを組むときは、誰でも不安になるものです。ここでは、フルローンを組んでも後悔しないためのポイントをご紹介します。
無理のない返済プランを立てる
フルローンで家を買うときにまず考えたいのが、「本当に払っていける金額か?」ということです。
金融機関が貸してくれる金額と、自分が安心して返せる金額は違います。
理想は、毎月のローン返済が手取り収入の25〜30%以内に収まること。
さらに、子どもの教育費や車の買い替え、もしもの病気など、将来的な出費も視野に入れておきましょう。
「今なんとか払えそう」ではなく、「ずっと払っていけるかどうか」で判断するのが、後悔しないポイントです。
諸費用やランニングコストも把握しておく
フルローンだと「家の代金は全部ローンに含まれる」と思いがちですが、実は購入にかかるお金はそれだけではありません。
火災保険、登記費用、ローンの手数料など、数十万円~100万円単位の初期費用が必要になりますし、買った後も固定資産税やメンテナンス費用といった出費がずっと続きます。
手元に現金が全然ない状態でフルローンを組むと、予想外の出費に対応できずに慌てることも。
ローン以外にかかるお金を前もってリストアップして、必要な現金を確保しておくと安心です。
繰り上げ返済を検討する
フルローンでスタートしても、のちのち「繰り上げ返済」をうまく活用すれば、返済負担をぐっと軽くすることができます。
ボーナスや貯金が貯まったタイミングでまとまった金額を返せば、利息の総額を減らせたり、返済期間を短くしたりと何かとお得です。
とくに住宅ローン控除の期間(最長10年)が終わったあとに繰り上げ返済をするのが効果的。
タイミングや手数料などは銀行ごとに違うので、事前にしっかり確認しておくと安心です。
住宅ローンと頭金に関するよくある質問

最後に、住宅ローンの頭金に関するよくある質問をご紹介します。
頭金はどれくらい入れるべき?
一般的には、住宅価格の2〜3割を入れるのが理想と言われていますが、実際には1割以下、あるいはゼロで購入する人も増えています。
重要なのは「どれだけ頭金を入れたか」よりも、「無理のない返済計画になっているかどうか」。
頭金を入れすぎて貯金がほぼゼロになってしまうのでは、本末転倒です。
1割りや2割でなくても、生活に余裕を残しつつ今後の支出も見据えた納得のいく金額を設定するのが大切です。
45歳・頭金なしで住宅ローンを組むのは無謀?
45歳で頭金ゼロの住宅ローンを組むと、確かに完済年齢が定年後にかかる可能性があるため、注意は必要です。
ただ、年齢だけでは無謀とは言えません。
重要なのは、返済能力と今後のライフプラン。定年後も働ける見通しがある、退職金で残債を補えるなど、計画が立っていれば実現可能です。
また、借入期間を短く設定したり、繰り上げ返済のプランを最初から織り込んでおくと安心感が増すでしょう。
「頭金なし」と「3年後頭金あり」ならどっちがいい?
ここでは、以下の条件で具体的にシミュレーションして比較してみましょう。
条件
- 住宅価格:3,000万円
- 金利(固定):1.5%
- ローン返済期間:35年
- 現在の家賃:月9万円
- 3年間で貯める頭金:300万円
項目 | 頭金なしですぐ購入 | 3年後に頭金300万円で購入 |
借入金額 | 3,000万円 | 2,700万円 |
総返済額(利息含む) | 約3,768万円 | 約3,391万円 |
利息負担 | 約768万円 | 約691万円 |
毎月返済額(35年) | 約8.97万円 | 約8.08万円 |
家賃(3年間) | 0円 | 約324万円(9万円×36か月) |
実質総コスト | 約3,768万円 | 約3,715万円(返済+家賃) |
表から分かる通り、3年後に頭金を貯めて購入した場合、ローン総額や利息負担は抑えられますが、貯めている間に家賃支出がコストとしてかかってきます。
ただし300万円くらいなら、実質的な総コストはそこまで大きく変わりません。
また、3年間で金利や物価が上昇すれば、頭金を入れても想定以上に支払額が増えてしまうリスクもあります。
逆に、頭金なしですぐ購入すれば家賃支出がなくなり、その分を繰り上げ返済にまわせば、支払い総額を抑えることも可能です。
ライフスタイルや将来設計に応じて選んでも良いと言えるでしょう。
まとめ
今回は、頭金なしの住宅ローンについて解説しました。
確かに頭金を入れないことで毎月の返済額や総返済額が増えるデメリットはありますが、手元資金を残しておける、すぐにマイホームに住めるといったメリットも存在します。
住宅ローン控除などの制度を活用すれば、頭金なしでも賢く住宅を購入することは可能です。
まずは「自分にとって無理のない住宅ローンの形」を見極めることから始めてみましょう。
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