近年、玄関を引き戸にしたデザインの住宅が再び注目を集めています。
和の趣を感じさせる引き戸は、昔ながらの家屋というイメージが強いですが、現代的な住宅デザインにも取り入れられることが増え、その利便性やデザイン性が見直されています。
一方で、開き戸と比べた時にどっちがいいか悩む方も多いのではないでしょうか。
今回は、引き戸の種類や開き戸との違いに触れつつ、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
玄関ドアの中でも、引き戸を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
目次
ひと言に引き戸といっても、さまざまな種類があります。
ここでは、一般的な住宅の玄関にも取り入れられている「片引き戸」「引き違い戸」「引込み戸」をご紹介します。
片引き戸
片側にのみスライドするタイプの引き戸で、シンプルな構造が特徴です。省スペースで開閉できるため、狭い玄関にも適しています。デザインの展開が多く、近年では最も人気の引き戸タイプです。
引き違い戸
2枚以上の戸を左右にスライドさせて開閉するタイプです。大きな開口部が確保できるため、通行量の多い玄関や荷物の出し入れが頻繁な家庭に便利です。2枚タイプだけでなく4枚タイプもあり、日本家屋などでよく採用されています。
引込み戸
引き戸が壁の内部に収納されるタイプです。開けた際に戸が完全に壁の中に収まるため、開口部を広く使うことができ、玄関周りがすっきりとした印象になります。引き戸が露出しないため、壁面を使った装飾や収納の設置にも適しています。
近年、引き戸を取り入れるご家庭が増えている背景には、やはり利便性の高さが挙げられます。
ここからは、引き戸のメリットを見ていきましょう。
ドアの開閉が非常にスムーズできるのが、引き戸の何よりもの魅力です。
高齢者や小さな子どもがいる家庭でも、力をほとんど使わず軽い力で開閉できます。
片手でのスライドで開閉ができるため、手が塞がっていても簡単に出入りが可能です。
特に高齢者や小さな子どもがいるご家庭では、引き戸のスムーズな操作性が実感できるでしょう。
引き戸は横スライドでの開閉になるため、開き戸のようにドアが前後に動くスペースを必要としません。
そのため、玄関前に物が置いてあったり、風でドアが煽られる心配がある場合でも、問題なく出入りができます。
また、ドアを開けっぱなしにしやすいのもメリット。
車いすやベビーカーを使う家庭でも出入りがしやすく、特に引き違い戸・引き込み戸であれば、大きな開口部が確保できるため、複数人での出入りや大きな荷物の搬入・搬出もスムーズに行えます。
こうした使い勝手の良さが、引き戸が再び注目される理由の一つとなっているのでしょう。
引き戸はスライドして開閉するため、開き戸のようにドアが前後に動くスペースが必要ありません。
そのため、玄関内外で使えるスペースが広くなり、出入り口の周辺に物を置いても「ドアが開けられない…」といったトラブルも防げます。
開き戸だと邪魔になりがちな傘立てや後付けの靴箱なども、引き戸の場合は玄関のレイアウトに合わせて自由に配置できます。
また、玄関前が狭い住宅や道路に面している場合でも、ドアが外側に開かないため、通行人や車の邪魔になる心配もありません。
こうしたスペース効率の良さは、限られた敷地を有効に使いたい場合に大きなメリットでしょう。
引き戸はスライド式で動くため、開き戸のようにドアが勢い良く閉じることがなく、指を挟むなどの事故が起きにくい構造です。
強風の影響でドアが急に閉まったり、開閉時に周囲の人や物にぶつかるといった心配もほとんどありません。
また、引き戸の動きは一般的に滑らかでゆっくりしており、ドアが自動で閉まるクローザーが付いていることも少ないため、小さな子どもがいるご家庭でも安心です。
引き戸の開閉によるメリットは大きいですが、やはりデメリットも存在します。
ここから、玄関ドアを引き戸にするデメリットをご紹介します。
引き戸の構造上、スライドする際に戸と枠の間にわずかな隙間ができやすく、開き戸よりも気密性が低いことは否めません。
住宅の構造の中に隙間があると、冬場に室内の暖かい空気を逃がしてしまう原因となり、暖房効率が下がることに繋がります。
また、日本家屋でよく使われているガラス面が多い引き戸も、住宅の断熱性が低くなる原因です。
しかし、近年では断熱性能や気密性を高めた高品質な引き戸も増えています。
引き戸を選ぶ際には、特殊なパッキンで隙間をカバーしたものや、ガラスの二重構造で断熱性を強化したものなど、機能性に優れた製品がおすすめです。
ドアのデザイン性だけでなく、機能性にも注目してみてください。
開閉のためにレールや隙間が必要な引き戸ですが、侵入手段として悪用される可能性も。
バールのような工具を使って引き戸をこじ開けられるリスクが、開き戸に比べて高いと言われています。
ただ、最近では引き戸も防犯性が強化されており、開き戸にも劣らないものも登場しています。
防犯性の高い二重ロック機能や、ガラス部分に防犯ガラスを採用したもの、こじ開けに強い構造を持つ製品なども増えているので、意識しながら引き戸を選びましょう。
引き戸は横にスライドして開閉するため、戸が動くスペースを確保する必要があります。
そのため、引き戸を設置するには玄関の横幅に少し余裕がなければなりません。
特に、狭い間口の住宅や、玄関スペースが限られている場合には、引き戸を取り付けるのが難しいこともあるでしょう。
もし間口に余裕がない場合は、引き込み戸やコンパクトな引き戸を選ぶなど、設計上で少し工夫をすれば設置できることも多いです。
玄関のスペースと相談しながら、引き戸の種類を選びましょう。
玄関引き戸は、構造上どうしても戸と枠の間にわずかな隙間ができやすく、完全に密閉するのが難しいため、小さな虫が隙間から侵入しやすくなります。
特に夏場や湿気が多い時期には、「いつの間にか家の中に虫がいた…」なんてこともあるでしょう。
対策としては、引き戸用の網戸を設置する、戸や枠にしっかりとしたパッキンを取り付ける、虫が嫌がる香りのアイテムを玄関に置くといった方法があります。
ただし、開き戸を選んでも完全に防げるわけではないため、虫の侵入が気になる場合には、家の中で虫対策アイテムを使用しましょう。
引き戸を選ぶ人は増えているものの、住宅の玄関ドアとしては、まだまだ開き戸がよく採用されているためデザインの幅は少ないです。
特に、開き戸でよく見られるような装飾の多いデザインや、個性的な凝ったディテールのドアは、引き戸ではあまり見られません。
しかし、和のイメージばかりだった引き戸も、最近では引き戸のデザインも進化しています。
引き戸の中でも片引き戸タイプでは、モダンな外観に合いやすいシンプルなものや、木目素材の温かみのあるデザインなども増えてきているため、デザイン性も重視するなら「片引き戸」を中心にチェックしてみてください。
最後に、玄関引き戸に関するよくある質問をご紹介します。
開き戸と引き戸それぞれの特性を踏まえた上で、家族の生活スタイルや住宅環境に合う方を選ぶのがベストです。
開き戸・引き戸がおすすめな人をそれぞれご紹介します。
開き戸がおすすめな人
引き戸がおすすめな人
最終的には、住む人全員の使いやすさや、住環境に合った機能性、デザイン性のバランスを考えた上で、開き戸は引き戸かを決めましょう。
開き戸から引き戸、または引き戸から開き戸への変更は可能ですが、リフォーム工事が必要となります。
変更の工事には、主にカバー工法が取られ、既存のドア枠を残したまま工事をするので、半日~1日程度で工事が完了します。
リフォームの相場は、大体30万円~50万円程度です。
引き戸を選ぶ人が増えてきているので、最近では洋風デザインに合うドアも登場しています。
バリエーション豊かな開き戸に比べると少なくはなりますが、同じデザインの中でカラーなども選ぶことができ、さまざまな外観のデザインに合わせられるほどのラインナップは用意されています。
「引き戸にしたいけどデザインが…」ということも、ほとんどありません。
今回は、引き戸のメリットとデメリットを詳しく解説しました。
引き戸は、ドアが開けやすく出入りがしやすいのが最大のメリットです。
一方で、断熱性や防犯性が懸念されますので、デメリットを理解しながら弱点に特化したドアタイプを選んでみてください。
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