2024.09.30
日常生活の中で、普段なにげなく通る玄関の段差。
実は「上がり框」という名前があって、機能面だけでなく、空間的なアクセントも加える重要な役割があることをご存じでしょうか?
家づくりを考える上で、上がり框はデザイン性にも悩むところです。
今回は、上がり框の基礎知識から、設置するメリット・デメリット、さらに最適な高さやデザインの決め方まで詳しく解説します。
玄関内部のデザインや機能性に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
玄関の上がり框とは、玄関と室内を区切る段差部分に設けられた板のこと。玄関と土間との境界部分を指し「玄関框」と呼ばれることもあります。
日本の住宅では、靴を脱ぐためのスペースと居住空間を明確に分ける役割を果たしており、モダンな住宅でも当たり前のように取り入れられる日本の文化として大切にされてきました。
上がり框の役割は、機能的な面と社会的な面の両面を持っています。
機能的には、家の中に土やホコリが入るのを防ぎ、玄関の美しく見せる一方で、社会的には家庭の内と外を明確に分ける重要な存在です。
かつては、訪問者が上がり框に座り、コミュニケーションを取る場所としても利用されてきました。
最近では、バリアフリーの観点から段差が少ない玄関が増えていますが、玄関の存在や美しさを強調するために、上がり框の高さやデザイン性を重視する家庭も多いです。
玄関の上がり框は、ただの段差というだけでなく、設けるメリットやデメリットが意外とあります。
ここからは、上がり框があるメリットと、上がり框がないメリットについて解説していきましょう。
玄関の上がり框には、次のようなメリットがあります。
家の中にホコリや汚れが入らない
上がり框があることで、玄関に段差が生まれ、靴に付いた泥や砂埃、雨の日の水滴などが室内に入りにくくなります。
特に、雨が多い季節や砂埃が気になる日も、汚れを家の中に持ち込ませずに済むため掃除の手間も減り、清潔な居住空間を保ちやすいです。
玄関に座りやすい
上がり框の段差は、椅子代わりにちょうど良い場所です。
子どもや高齢者が靴を履く場合には特に役立ち、手間のかかるブーツを脱ぎ着する場合にも、腰を掛けてちゃんと履けるので便利。
訪問者が来た際にも、玄関先でちょっと腰掛けて離すのにも活用できます。
玄関のデザインを楽しめる
上がり框は、訪問者を一番に迎えて室内を印象づける顔とも言える場所です。
デザイン性や素材に工夫をこらせば、玄関だけでなく家の中全体の印象をおしゃれな家へと印象づけられます。
玄関の上がり框のデメリットというよりも、上がり框がないメリットには次のようなものがあります。
バリアフリーにできる
上がり框を設けない玄関は、玄関に段差がないためバリアフリー化に最適です。
特に、高齢者や車椅子の人にとって玄関の出入りがしやすくなり、段差がないことによって、つまずきや転倒のリスクも減ります。
フラットな玄関なら、お掃除ロボットが段差から落ちる心配もありません。
視覚的に空間を広く見せられる
上がり框がないことで、玄関から居室空間までが段差なく繋がるため、空間が広く見える効果があります。
さらに、玄関と床材の素材を統一すれば、空間に一体感が生まれ玄関がより開放的でスタイリッシュな印象に仕上がります。
狭い玄関をより広く見せたい場合や、海外風のしゃれな家を演出するのにも効果的です。
上がり框の高さに決まりはありませんが、標準的な戸建て住宅の場合、高さ15~18cm程度が広く採用されており、バリアフリーを意識した高さとしても望ましいと言われています。
しかし、昔ながらの日本家屋では、湿気対策として床の位置を高く設ける必要があったため、30cm前後の高めの上がり框が多く見られました。
そのため、現在でも古き良き和の趣を感じたり、伝統的な技法を取り入れたい場合には、あえて高めの上がり框を設けることもあります。
ただ、上がり框の高さは、家の構造や家族のライフスタイルに合わせて設計することが大切です。
玄関に特に希望が無ければ、望ましいとされている18cm以下を選んだり、玄関に腰掛けて話し込むことが多いなら20cm以上の高さで腰掛けを兼ねるのも良いでしょう。
上がり框の高さに正解はないため、自分や家族の暮らしやすさを最優先にすると、理想の高さが見えてきます。
日常的に使う分にはあまり気にすることは少ないため意外ですが、上がり框の形状や仕上げ方によって、シンプルなデザインから優雅なデザインまで玄関の見え方は大きく変わります。
ここからは、上がり框のデザイン性についてご紹介していきましょう。
玄関の上がり框の形状には、ストレート型・L字型やコの字型・斜線型・曲線型など、さまざまなタイプがあります。
上がり框それぞれの形状で、以下のような特徴を持っています。
ストレート型 |
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L字型・コの字型 |
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斜線型 |
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曲線型 |
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このように、上がり框は形状によって玄関の印象や使い勝手が大きく変わるため、玄関の広さや家族のライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。
希望のデザインと実際の実用性を擦り合わせしながら、専門業者に相談していきましょう。
一般的な戸建て住宅の上がり框には、木の素材がよく採用されていますが、上がり框に使われる素材にはさまざまなものがあります。
選ぶ素材によって玄関全体の印象が変わるため、耐久性やメンテナンスのしやすさを考慮しつつ、家の雰囲気に合った物を選ぶことが大切です。
上がり框の代表的な素材としては、木材・石材・タイルなどが挙げられ、それぞれの素材の特徴は次のようになっています。
木材 |
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石材 |
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タイル |
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上がり框の素材選びのポイントは、玄関や家全体のコンセプトとの統一感を考え、空間に合わせた色や質感の素材を選ぶこと。
どの素材を選ぶにしても、上がり框を含む家全体で空間の雰囲気を作っていくことが大切です。
上がり框の高さは、各家庭のライフスタイルに合わせる必要があるため、10mm程度のほぼフラットなものから30cmを超えるものまでさまざまです。
高さ15~18cm程度を選べば無難ですが、全ての住宅に当てはまるわけではありません。
それでは家庭のライフスタイルに合わせた高さとは何を考慮すれば良いのか、上がり框を設置する際のポイントについてご紹介します。
上がり框を設置する際には、玄関のデザイン性や使い勝手に加えて、バリアフリー化を考えることが大切です。
特に、高齢者や体に不安がある方が同居する家庭では、段差を減らすことで転倒や上り下りの負担を軽減する必要があるため、上がり框の高さをより慎重に選ぶことが求められます。
一般的な子育て世帯や現役世帯なら、高さの選択肢は幅広いですが、車椅子利用者や足が悪い方がいる場合は、可能な限り段差を抑えるのが理想的。
たとえば、上がり框をあえて設けなかったり、10mm程度の少し境界線を作るくらいの高さが選択肢に入るでしょう。
ただ、上がり框を腰掛け代わりに靴を脱ぎ履きする高齢者も多いため、高齢の家族がいる全ての家庭に上がり框が低い方が良いわけではありません。
バリアフリー化で段差のない玄関と考えすぎると、座りにくかったり、玄関ホールが汚れやすかったり、かえって使いにくくなる場合もあります。
上がり框を設置する際には、手すりや腰掛けの補助設備なども合わせて検討しつつ、家族みんなの使いやすさを重視することが大切です。
戸建て住宅に引っ越す前の家は、アパートやマンションなどの集合住宅に住んでいた人が多いでしょう。
実は、アパートやマンションの上がり框は50~70mm程度が広く採用されているのに対し、戸建て住宅では150~180mmが多いため、高さが大きく違います。
そのため、引っ越してすぐに「段差が高すぎる」と意外と不満が出やすい場所。
半分以下の高さの上がり框に慣れている人が、いきなり段差が大きくなればやはり不満は出ます。
住んでいく内に少しずつ慣れれば問題ありませんが、以前住んでいた家の玄関の高さが気に入っているのであれば、忘れずにマイホームにも採用しましょう。
いろいろな家庭があるからこそ、玄関のデザインも住宅によってさまざまです。
ここからは、玄関の上がり框の実例を紹介します。玄関の全体的な雰囲気に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
白と赤茶色を基調としたシンプルな玄関。
土間にシューズクローゼットを隣接させることで、上がり口も広く感じる上がり框に仕上がっています。
流行のグレー系デザインで統一された玄関。
シンプルな色使いながらも、玄関マットを置くことで高級感とおしゃれさを感じる空間に仕上がっています。
ドアに対してあえて斜めに上がり框が設けられた玄関。
限られた空間でも上がり口が広く、視覚的にも広さを感じる印象に仕上がっています。
玄関ドアよりもずっと大きい上がり口が印象的な玄関。
大人数が一気に家に押しかけても、詰まることなく一緒に靴の脱ぎ履きができそうです。
茶色系で統一されたシンプルながらも、玄関マットがどこか懐かしい可愛い玄関。
上がり框は一般的な戸建ての高さですが、手すりを設置することで足の悪い家族へ配慮された空間に仕上がっています。
今回は、玄関の上がり框にメリットとデメリット・高さやデザインの決め方をご紹介しました。
玄関の上がり框は、普段は何気ない存在ですが、日本の靴を脱ぐ習慣にとってなくてはならない存在です。
上がり框のメリットやデメリットを考慮に入れつつ、家族のライフスタイルに応じた玄関の使いやすさを改めて考えてみてください。
当グッドリビングでは、玄関を含めた間取りのさまざまな設計のご相談を受け付けております!
今回ご紹介した実例の中で気になるものがありましたら、ぜひお話をおきかせください。経験豊富なスタッフが一から丁寧にご案内いたします!